【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(5月9日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる5月9日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、およびロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

戦勝記念日 モスクワで式典 プーチン大統領 欧米側を強くけん制

ロシアでは9日、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利してから79年の記念日となり、20以上の都市で軍事パレードなどが行われました。

首都モスクワでは、日本時間の9日午後4時から中心部にある赤の広場で記念式典が行われました。

雪もちらつく中で行われた式典でプーチン大統領が演説し「ロシアを脅かすことは許さない。われわれの戦略部隊はいつでも戦闘準備ができている」と述べ、核戦力も含めてロシア軍の戦力に言及し欧米側を強くけん制しました。

そして「国家と国民の、自由と安全な未来を確保できると確信している。ロシアのために。勝利のために。万歳。」と述べ、ロシア軍のウクライナでの勝利に向けて国民に改めて結束を呼びかけました。

欧米各国の首脳は出席せず

このあと軍事パレードが行われ、短距離弾道ミサイル「イスカンデル」などウクライナの前線でも使われている兵器のほか、ロシア軍の核戦力の中枢を担っているICBM=大陸間弾道ミサイル「ヤルス」なども登場しました。

一方、今回のパレードには、70以上の兵器や、軍事侵攻に加わる兵士を含む9000人以上が参加しましたが、ウクライナ侵攻前の2021年には190以上の兵器と1万2000人以上が参加していて、侵攻のあと、その規模は縮小されています。

式典には、ロシアと同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領など旧ソビエト諸国や、キューバやアフリカの一部の国の首脳などが参列する一方で、欧米各国の首脳は出席せず、式典は、欧米との激しい対立など長期化する軍事侵攻を反映する内容となりました。

ロシア 各地で戦勝記念日の式典

極東の中心都市ウラジオストクで9日午前に行われた軍事パレードには、兵士の行進や戦車の隊列に加えて、ロシアが不法に占拠する北方領土にも配備している地対艦ミサイルシステム「バスチオン」が披露されました。

沿道に集まった大勢の市民の中には、ウクライナ侵攻への支持を示す象徴となっている「Z」の文字などがデザインされた旗を掲げる人の姿も見られました。

ロシア国営のタス通信によりますと、軍事パレードは28の都市で実施される一方、ウクライナに隣接する西部クルスク州などでは安全上の懸念を理由に中止が決まっています。

ウクライナ支援予算案など可決の米下院議長の解任動議採決されず

アメリカ議会下院では、共和党の保守強硬派の議員が、ウクライナ支援のための緊急予算案などを可決させたジョンソン下院議長に反発して、解任動議の採決を求めましたが、これに対し「混乱を避けるべきだ」などとして、共和党に加えて民主党の多数の議員が反対に回り、解任動議は採決に至りませんでした。

下院では、多数派を占める共和党内で一部の保守強硬派の議員の影響力が強まり、去年10月、当時の議長が史上初めて解任され、3週間以上にわたって法案の採決などができなくなりました。

今回は保守強硬派の議員の解任動議を超党派で阻止した形で、議会が空転する事態は回避されました。

イギリス ロシア駐在武官をスパイ活動で国外退去へ

イギリス政府は、スパイ活動をしていたとみられるロシアの駐在武官を、国外退去させると発表しました。

イギリス政府は8日、国内でのロシアの諜報活動への対抗措置として、ロシアの駐在武官を国外退去させるほか、ロシアが諜報活動に使っていたとみられる国内の複数の施設を「外交施設」の位置づけから除外すると発表しました。また、ロシアの外交官の滞在期間を制限するとしています。

今回の措置について、クレバリー内相は「われわれはロシアに対し抑止のための強いメッセージを送るとともに、その諜報機関の能力をさらに低下させる措置をとる」としています。

イギリスでは去年からことしにかけて、ロシアのためにスパイ活動をしていた罪でブルガリア国籍の6人が起訴されたほか、近年、議員へのサイバー攻撃などが相次いでいて、イギリス政府はロシアが関与していたという見方を示しています。

イギリス政府は2018年、国内で起きたロシアの元スパイの暗殺未遂事件を受け、ロシアの外交官23人を追放するなどの措置をとり、欧米など各国もそれに続きました。

これに対し、ロシア政府は各国の外交官を国外退去させたいきさつがあり、今回もロシア側が対抗措置をとるものとみられます。

ウクライナは5月8日を「戦勝記念日」と正式に定める

ウクライナは2023年、第2次世界大戦でナチス・ドイツが降伏した日の5月8日を「戦勝記念日」と正式に定め、5月9日を戦勝記念日とするロシアとの違いを明確にしました。

ゼレンスキー大統領はこの日にあわせてSNSに動画でメッセージを出し、「80年前、数百万人のウクライナ人たちがナチズムを打ち砕くために戦ったが、こんにち、われわれは再び、悪に立ち向かっている。この悪とはロシアファシズムだ」として、ロシアをナチス・ドイツになぞらえて非難しました。

そして、この動画の撮影場所は、侵攻の開始当初、ロシア軍が子どもを含むおよそ350人の住民を監禁した、北部チェルニヒウ州の村にある建物の地下室だとした上で、「光や食料、水などもない地下室に閉じ込められた彼らを想像すれば、プーチンのロシアがどのようなものであるか理解できるだろう」と訴えました。

そのうえで「世界がことばではなく行動によって反プーチン連合でまとまれば、モスクワのナチスを阻止し、新たな悪がヨーロッパ全体、さらには世界中に広がることを防ぐことができる」と述べて、各国に結束を呼びかけました。

キーウの独立広場 ウクライナの勝利を待ち望む声

ロシアによる軍事侵攻で戦死した兵士の名前などが書かれた国旗が立てられている、首都キーウの独立広場では、9日も家族や戦友の死を悼む人たちの姿が見られました。

訪れた人たちからは、ロシアをナチス・ドイツになぞらえて非難する声や、ウクライナの勝利を待ち望む声が聞かれました。

侵攻後、兵士として前線に赴いたこともあるという58歳の男性は「私は戦地ですべてを見ました。ロシアはわれわれを放っておかない。私たちを生かしておかない」と話し、勝利を願っていました。

62歳の女性は「私たちはロシア人とウクライナ人がともにナチズムに勝ったことを記憶しながら、良好な関係を築いてきました。しかし今は、ロシアがナチスなのです」とロシアを非難しました。

60歳の男性は国旗を指しながら「これを見てください。どれだけの若者が亡くなったのか。とても恐ろしいことです。まず必要なのは勝つことです」と話していました。