イスラエルとハマスの間の戦闘休止と人質解放に向けた、仲介国エジプトでの交渉で、イスラエル側は「進展の兆しはないが、交渉団はエジプトに残る」としたと伝えられています。
一方、ハマス側は「イスラエルは交渉に真剣ではない」と批判し、交渉は難航しているとみられています。
【詳細】イスラエル・パレスチナ・中東情勢(5月9日)
イスラエルとイスラム組織ハマスの間の戦闘休止などに向けた交渉をめぐり、イスラエルを訪れていたアメリカのCIA長官は、再び仲介国エジプトに戻ったと伝えられています。
バイデン大統領は、イスラエルがガザ地区南部ラファへの大規模な地上作戦を行った場合、武器を供与しない考えを明らかにしており、こうしたアメリカの対応が、停滞する交渉の打開につながるかが焦点です。
※中東情勢に関する日本時間5月9日の動きを随時更新してお伝えします。
イスラエルとハマスの交渉 難航か
イスラエルのメディアは8日に、CIA=中央情報局のバーンズ長官とネタニヤフ首相らが会談し、この中でイスラエル側は、ハマスが受け入れたとする提案について、「すべてのレッドラインを越えていて、受け入れられない」と伝えたと報じています。
その後、バーンズ長官は再びエジプトに戻ったと、アメリカのCNNテレビが伝えました。
バイデン大統領“地上作戦ならイスラエルに武器供与せず”初言明
アメリカのバイデン大統領は8日、CNNテレビとのインタビューで、イスラエルがガザ地区南部ラファへの大規模な地上作戦を行った場合、砲弾などの武器を供与しない考えを明らかにしました。
去年10月にガザ地区で戦闘が始まって以来、バイデン大統領が公にイスラエルへの武器支援の停止に言及したのは初めてで、こうした対応が停滞する交渉の打開につながるかが焦点となっています。
ラファ イスラエル軍が退避通告した東部以外でも攻撃
避難者など120万人が身を寄せるラファでは、イスラエル軍が住民に退避を通告した東部以外でも攻撃が相次ぎ、地元メディアは、西部にある住宅が空爆され、子どもを含む8人が死亡したと伝えていて、犠牲者の数は3万4904人となったと地元の保健当局が発表しました。
UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は、イスラエル軍によるラファでの軍事作戦の強化で、およそ8万人が新たに避難を余儀なくされ、どこにも安全な場所はないなどとしていて、人道状況は悪化の一途をたどっています。
林官房長官「わが国はラファへの全面的な軍事作戦には反対」
林官房長官は午前の記者会見で「わが国としてはラファへの全面的な軍事作戦には反対であり、人道支援活動が可能な環境が確保され、人質の解放が実現するよう、即時の停戦を求めるとともに、それが持続可能な停戦につながることを強く期待する」と述べました。
そのうえで「イスラエル側に対しても、ラファの状況への懸念に言及しつつ行動を求めてきており、事態の沈静化と人道状況の改善に向けて、引き続きあらゆる外交努力を行っていく」と述べました。
イギリスの大学でガザ地区攻撃への抗議行動
イスラエルによるガザ地区への攻撃をめぐっては、アメリカ各地の大学で抗議デモが続き、これまでに多数の逮捕者も出ています。
こうした中、イギリスでも10以上の大学で抗議活動が行われていて、このうち名門として知られるケンブリッジ大学では、「パレスチナに正義を」などと 書かれた横断幕が掲げられ、学生や職員が敷地内に50近いテントを並べて寝泊まりしています。
学生たちは大学側に対し、イスラエルと取り引きがある軍事会社に大学の基金から出資しないことや、こうした企業から研究費を受け取らないことなどを求めています。
抗議活動に参加している男子学生は「私たちの学費が、納得できない目的のために使われないようにしなければならない。大学側が私たちの要求を聞き入れるまで抗議を続けていく」と話しました。
これに対してスナク首相は7日の閣議で「キャンパス内での反ユダヤ主義の高まりは受け入れられない」と述べ、9日、首相官邸に各大学の責任者を呼んで、断固とした対応をとるよう求める方針です。
米国防長官 イスラエルへの弾薬輸送一部停止を明らかに
イスラエルへの軍事支援を続けてきたアメリカのオースティン国防長官は、8日、議会上院の公聴会で「状況を鑑み、われわれは威力の強い弾薬の輸送を停止した」と述べ、イスラエルへの弾薬の輸送を一部停止したと明らかにしました。
その上でオースティン長官は「われわれは当初から、イスラエルが戦闘地域にいる民間人を保護せずにラファで大規模な攻撃を始めるべきではないと明言してきた」と述べました。
去年10月にガザ地区で戦闘が始まって以来、アメリカがイスラエルへの弾薬の輸送を停止したことを明らかにしたのは初めてです。
アメリカはラファへの大規模な地上作戦を支持しない立場を繰り返し示していて、イスラエルに対し慎重な対応を促すとともに、戦闘が長引き民間人の犠牲が拡大する中、イスラエルへの軍事支援を続けていることに対する国内外からの批判をかわすねらいもあるとみられます。